3部で構成された中劇場で行う公演。1部は若手のパ・ド・ドゥ集でチャレンジングな意味合いも強い。2部はプリンシパル木村優里さんファーストソリスト木下嘉人さんの振り付け作品。そして3部がナチョ・デュアトの「ドゥエンテ」。
『ラ・バヤデール』第3幕より
【出演】廣川みくり 石山 蓮
トップバッターはやはりプレッシャーがかかるのでしょう。廣川さんは緊張が強いように思え、いつもの感じではありませんでした。ヴェールのパドドゥで少しミスがあったりしましたが、踊り込めていない、役をモノにしていない感はありました。
『眠れる森の美女』第3幕より
【出演】中島春菜 渡邊拓朗
無難にきれいにまとめ上げました。二人のパートナーリングで少しピリッとしないところはあったような気がします。
『ジゼル』第2幕より
【出演】吉田朱里 仲村 啓
吉田さんは先日の「白鳥の湖」でプリンシパル木村優里さんの代役でオデットオディールを踊りました。その経験が生きたのか最も役を掴めている踊りをしているように感じました。これからの伸び代を感じます。仲村さん、Va.のザンレールから倒れる場面、すごく重要だからきちっと回って倒れ込んでほしいです。ゆっくり倒れちゃダメですあそこは。ちょっと失敗しちゃってたかな…でもリフトやパートナーリングは良かったです。
『ドン・キホーテ』第3幕より
【出演】金城帆香 山田悠貴
二人の身長が合っていないため不自然なパートナーリングと感じました。金城さんはフェッテの軸足が落ちてしまい残念でした。山田さんは終始気合いが伝わる踊りでした。
総評として全体的に男性陣があまり目立ちませんでした。
そしてパートナーリングがあまり合っていない。例えばピルエットの止めが甘く音が合っていない、男性と女性のテンポ感が合っていないなどピリッとしない印象を受けました。
そんな中吉田朱里さんのジゼルは全幕を見たいと思わせるもので、今後の活躍を期待したいです。
主役の踊りはこうして見るとなかなか難しいものですが、伸び代の大きい若手に踊るチャンスを与えるチャレンジの場は意義があるものです。
ミスは気にせず、今後の舞台にどんどん生かしてもらえればと思います。
『Coppélia Spiritoso』
【振付】木村優里
【音楽】レオ・ドリーブ、カール・ジェンキンス
【出演】木村優子 木村優里
「コッペリア」から着想を得た可愛らしいバレエ作品。自分の分身を自分が作り出して動かしているかのような作風で可愛らしさと同時に不思議な感覚も感じられた。
『人魚姫』
【振付】木下嘉人
【出演】米沢 唯 渡邊峻郁
人魚姫が薬を飲んで美しい声を失ってから足が動くようになった後の話。米沢さんと渡邊さんが組んでいるのは初めてみたのですが息も合っていて、人魚姫と王子の物語を美しく描いていた。
『Passacaglia』
【振付】木下嘉人
【出演】小野絢子 福岡雄大 五月女遥 木下嘉人
道を思わせる照明から始まる。二組の男女が白い衣装で関わり合い、交差する。
今日ほぼ端っこの席で見ていたのですが、小野さんはこの方向から見ても本当に足のラインが美しい。非のうちどころがない。福岡さんのリズム感の良さが際立った。プリンシパル組に対するペア五月女さん、木下さんも好演。
『ドゥエンテ』
【出演】
「パストラル」 直塚美穂、木村優子、中島瑞生
「シランクス」 花形悠月、西 一義
「フィナーレ」 山田悠貴、石山 蓮、小川尚宏
「神聖な舞曲」 赤井綾乃、徳永比奈子、山本涼杏、中島瑞生、西 一義、森本晃介
「世俗の舞曲」 全員
ナチョ・デュアトの作品。
この作品については「民家に住み家を荒らし、大音響をとどろかせたりすると言われる想像上の精霊」を表現したものだという。
とにかく直塚さんが目に入ってきた。アピール力やパンチ力の高さがピカいちだった。
大劇場の公演を見ていると、「この人に主役してもらいたい」とか若手に対して色々と思うこともありますが、改めてグランドバレエで主役を張って拍手を受けるプリンシパルダンサーの素晴らしさを実感しました。
そしていろんな経験をして化けるダンサーもいると思うので、どんどんチャレンジの機会を設けていただきたいと思います。
あの小野絢子さんだって、私がスヴェトラーナ・ザハロワ主演の新国立劇場公演に通っていた頃は何の記憶も残っていないダンサーでしたが、今や素晴らしいダンサーとなりましたから。