16日公演のドロテ・ジルベールとユーゴ・マルシャンの濃厚な情欲を感じさせた「マノン」から一夜明け、今日は今年アデューのミリアム=ウルド・ブラームと全幕はもう最後かもしれないマチュー・ガニオの「マノン」を鑑賞しました。
昨日のドロテ&ユーゴ組の「マノン」と比較するとこちらはマクミランの言う「マノンが自分のことをよくわかっていない」マノンそのものでした。
原作はいまさら読んでいる途中です。
ミリアムのマノンは天衣無縫。無垢な美しさに惹かれる大人たちに戸惑いや躊躇を見せる少女で、なにものにも触れられていない純粋さが周りを狂わせているように思える。ムッシューGMの愛人となり宝石や富に目が眩むもデグリューへの愛が根底にあるため、嫌らしい富豪のふるまいに時折嫌そうな顔をしていたのも見逃さなかった。
デ・グリューに関してもマチューはれっきとした騎士で身分の高さと17歳の青年の爽やかさを感じさせ、だから故に3幕マノンとともにボロボロの姿でニューオーリンズの港に降り立った姿はあまりにも哀れを誘い胸が苦しくなったと同時に、40を超えて変わらない気高い佇まいにはやはり見惚れてしまう。
兄のレスコーも昨日のパブロ・レガサと比較すると悪党風味はかなり控えめ。最終公演の18日では思い切りが良くなっていたが、演じたアンドレア・サリはジャンプが柔らかく着地の音がまったくしなかったのが印象的だった。プルミエールダンスーズ昇格が期待される一人ではないでしょうか。
またレスコーの愛人を演じたエロイーズ・ブルドンのあだ花ぶりが素晴らしく、カードのイカサマを見てしまった時の表情が最高に良かった。
ドロテ&ユーゴ組が要所要所で爆発的な感情を表しこちらも度々心が揺さぶられていたのとは対照的に、ミリアム&マチュー組はクライマックスに近づくにつれ一気に堰を切ったように感情が溢れ出してきた。
沼地のマノンはすでに生きる力を失い死を迎えると、デグリューは歯を食いしばり無念の表情でマノンの死を悼み幕が下りた。かつてマチュー・ガニオはイザベル・シアラヴォラと組んでマノンを踊った時はジョナサン・コープばりの大号泣を見せていたが、今回の無念の表情は非常に印象的だった。
ミリアム&マチュー組の17日ではナイフが飛んだり、2幕のパドドゥでマチューの手がミリアムのおでこを直撃したりとハプニングもありましたね。
18日のカーテンコールには今年アデューのミリアムに花束が送られ、「大成功おめでとうございます!またお会いしましょう」の横断幕が下がり千秋楽を終えました。
私はあまり小柄なダンサーを好んで見るタイプではないのですが、アームスや表現が繊細でまるで妖精のようでありながらつま先が強く美しくて大好きでした。とりわけ2017年来日時のミリアム・ウルド=ブラーム&マチアス・エイマンの「ラ・シルフィード」が。マチアスとの相性も非常に良く記憶に残っています。
明日は新国立劇場の「ホフマン物語」を見に行きます。