楽しみにしていたアマンディーヌ・アルビッソンが降板し、エトワールのパク・セウンが代役となった本公演。
2024年パリ・オペラ座バレエ団来日公演「白鳥の湖」の締めとなる公演である。
初日観劇時、1幕のコールドバレエがかなりとっ散らかっていてかなり不安を覚えたものの、今日は初日とはうって変わって初めから良い感じでした。
ジェレミー・ル=ケールはオデットに出会えた時の喜びとオディールに騙された後は階段に倒れ込むほどのショックを見せ、喜びも悲しみもそのままに純粋な王子を表現。伸びやかに踊りつつも少々ジャンプの着地や回転がピリッとしないところが多いのが残念だった。
オデットのパク・セウンは非常に芯が強くパの一つ一つが見事なコントロールを見せ、アティチュードやアラベスクのポーズをギリギリまで決めて見せる。宿命を乗り越えて見せようとする強いオデット像を見せた。
私は2幕のグランアダージオのこの部分↓、パクさんは真下までしっかり上半身を曲げるのが非常に印象的でしたね。
絶望している感情を表しているようでした。
そしてオディールについても表情は強めながら、あからさまな圧力を感じない強かさがありました。
フェッテは最後4回転くらい回ったような気がしますが、足が非常に強いですね。非常に美しかったです。
ロットバルトのジャック・ガストフも鋭い眼光でオデットを従え王子を制した。
そして見せ場である3幕のヴァリエーションでは弾力性のあるジャンプで盛り上げた。
そしてパドトロワのクララ・ムーセーニュが陽の気で溢れるような雰囲気とカン・ホヒョンの手足が長く清廉な踊りに惹かれた。
唯一惜しいのがパク・セウン、ジェレミー・ル=ケール、ジャック・ガストフと並ぶと、パク・セウンがトゥで立った時にロットバルトのガストフが1番小さく見える。
初日のトマ・ドキールも同様だったが、できればオデットよりも背が高いロットバルト役でなければ支配感が出ないのではないかと思う。
そう思うとプルミエール・ダンスーズのジェレミー・ル=ケールをロットバルトにということもアリだったのではないか。
ロットバルトという役は「ジゼル」のミルタ役と同じく主役を張れるダンサーが踊ると、途端に舞台全体が生き生きとしてくるものです。
かつて来日公演のジゼルでミルタ役をマリー・アニエス=ジロが演じてその素晴らしさに圧倒されたことを覚えているので、欲を言えばエトワールクラスあるいはプルミエのパブロ・レガサやジェレミー・ル=ケールで見たかった。
「白鳥の湖」2公演を見て思うことは、ミルピエ時代からクラシックが少なくなりコンテの公演が増える中、かつてに比べてクラシック演目への踊り込みが少なさが透けて見えました。
ジョゼ・マルティネスが監督となり、クラシック演目を増やして建て直していくといった話も聞きます。とはいっても、オレリー・デュポン前監督が2年先あたりまでプログラムを決めてから辞めたという話もありますよね…。
ヌレエフの子供たちといわれた世代から来日公演を見ている身としては、オペラ座のコンテ演目への挑戦的な姿勢も良いと思いますが、やはりクラシックあってのコンテというスタンスで行ってほしいと個人的に思います。