「セクシー田中さん」の原作者である芦原妃名子先生が亡くなった。急転直下の訃報であった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/00b5dcc3fca9ea5bee7161482d1f97ce2f1d1061
ダムに身を投げてしまわれたいうことで、各界に衝撃が走っている。
私も多分に漏れず昨日ドラマの脚本家である相沢友子氏のインスタが話題になっているのをみて、脚本家としてずいぶんな言い草だなと思っていたところでした。
しかし芦原先生が自死してしまったとは言葉がありません。
芦原妃名子先生の投稿↑
私はめちゃくちゃ漫画が好きで、漫画ばっかり読んでます。
個人の持論ですが、漫画家って何より私はすごいと思うんです。
ストーリープロットを考えて、背景やキャラクターを自分の手で描いて世界観から人物の動きまでコマ割りで表現する。子供の頃漫画を描いてみようと初心者マンガセットを買ってやってみたものの、全然書けませんでした。
とは言っても漫画家は一人で全部作業をやっていないじゃないか、アシスタントがいるじゃないか、ストーリーと作画が別の漫画もあるじゃないかと言われても、0から生み出したという労力は計り知れないほど大変なものだと思います。
そんな結晶のようであり自分の子供と言っても差し支えないほどの作品を、ドラマでまるで踏みにじるかのように改変してしまい最終の2話を原作者が急遽筆を入れざるを得なくなったというのが今回の件です。
相沢友子氏は過去にも「ミステリと呼ぶ勿れ」や「ビブリア古書堂の事件手帖」でも原作を改変するためファンからはとても評判が悪い脚本家です。
プロデューサーや上層部の意向に沿っただけだという人もいますが、仕事を受けないという選択もできます。それをしなかったのは改変を仕事としてよしとしているのでしょう。
世の中には自分の名前で作品を出せるプロと、商業ベースのプロがいます。
カメラマンで言えば、前者は篠山紀信さんやレスリーキーさん、アラーキーさんのような、モデルの名前を隠してもその人の名前で展覧会や作品が認知されている人です。後者はクライアントの要望に沿って自らの技術を活かしつつ被写体を撮影する人です。
どちらが優れているか劣っているかの話ではありません。商業ベースはクライアントの要望をヒアリングする力も必要で、与えられた材料にちょっとしたスパイスをどう加えるかがものすごく上手い人です。
だから脚本家もオリジナルが書けないからダメとかそういうことを言うつもりは全くありません。
原作ありきのプロ脚本家の一人に「逃げ恥」「アンナチュラル」の野本亜紀子氏がおられます。
野本亜紀子氏の脚本は原作ありきでも視聴者から非常に人気が高い。ドラマを見るのがめんどくさいなって思う私も「アンナチュラル」は俳優も良かったし面白くて最後まで見ました。原作を上手く脚本に落としているのがよくわかりました。
今回相沢氏が「原作者が私のドラマ脚本の邪魔をした」と言わんばかりの投稿をしたこととそれに対する仲間の脚本家たちの擁護は、結果的に原作者を踏みにじり自らすら貶めているように感じます。
よくよくインスタグラムを見ていると「感性を感じる」と言うよりも仲間と群れて傷を舐め合っているような、そんな人物のように見えてきました。
「媚びるへつらう」ことに機敏であっても、脚本家でありながら感情の機微を汲み取る感性がないことが残念でなりません。
今回の芦原妃名子先生の「セクシー田中さん」の件で、コンテンツ制作者は「原作とはどう付き合うべきか」に改めて見直す時が来たのだと思います。
メディアミックスで言えばドラマや映画のみならず、舞台もその一つです。
原作ありきの舞台を原作ファンを失望させることなく次々と成功させている宝塚歌劇団を取り上げてみましょう。
実は宝塚にはスターシステムという縛りがあるため、時には役の比重が変わったり新しい役が追加されることも多々あります。漫画だけでなくかなり難易度の高い長編小説が原作となることもありますが、原作ファンが「失望した」という声を聞くことは極めて少なくむしろうっかりヅカ沼にハマってしまうことも…。
古くはあの「ベルサイユのばら」を舞台化して現在まで繋いできた劇団ですから、「るろうに剣心」「花より男子」「はいからさんが通る」「エル・アルコン」「天は赤い河のほとり」などなど実写化の成功例は多数。
私が見た中で特に素晴らしかったのが「ポーの一族」と「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」です。
「銀河英雄伝説」は好きな男性の友人も見に行きいたく感動したと言っていました。実際に私もたまたま何かで見かけたラインハルトがあまりにも思い描いていたラインハルトとピッタリで、9頭身で手足の長い当時の宙組トップスター 凰稀かなめさんがきっかけで宝塚観劇が趣味となったのです。
「ポーの一族」は明日海りお、柚香光がトップ2番手に揃ったからこそ解禁した演目といえ、小池修一郎先生がこの作品が大好きで仕方なくてどうしてもやりたいと萩尾望都先生に大昔に掛け合って、いつか舞台化すると密かに温めてきたといいます。
やろうと思えばいくらでもやれたのかもしれません。でも安易にやらずに温めてきた。
明日海りおのエドガーと柚香光のアラン、二人が原作のビジュアルを再現せんと作り込んできた努力もさることながら、漫画から飛び出てきたような美しさ。あの少年性と耽美な雰囲気は三島の「豊饒の海」第一巻「春の海」の松枝清顕を見事に演じた明日海りおとレスリー・キーも絶賛した強烈な個性を持つ柚香光だからこそ再現できるのだと、今から思えば真の原作への思い入れとはこれほどなのかと感じるほどでした。
小池修一郎先生はオリジナルの脚本も書かれることはありますが、やはりその「潤色能力」の素晴らしさが群を抜いています。
そして「エリザベート」を日本に持ち込んだことで有名ですが、本国版はちょっと暗い感じ。それもそのはずでエリザベート皇后が死神に取り憑かれて死ぬまでを描くものですから。そして主演はタイトルの通りエリザベートです。
しかし宝塚はトップスターが主演でなければならないため、女性のエリザベートは主役ではなくなります。そしてトートという死の抽象的存在は「黄泉の帝王」として主役に。そして「黄泉の帝王が愛してしまったからエリザベートは死に導かれた」という恋愛要素までしっかり加えてしっかりファンのハートを掴んで、超人気演目になりました。
宝塚もよくスカイステージや機関誌などで「プロダクション・ノート」が公開されますが、裏方から演者までがみんな汗水垂らして身を削って作品に命を吹き込んでいることがよくわかります。
ドラマの番宣やNG集ではなく私たちはこういうものが見たいのです。
原作への深い愛情とファンに寄り添った舞台作り。そして演者の原作再現性への飽くなき探究心。これが揃ってこそ人気演目であり視聴者やファンの心を捉え、結果として収益につながるものなのではないでしょうか。
芦原先生が命を落とされた後、相沢友子氏はインスタグラムに鍵をかけ彼女に賛同のコメントを寄せていた仲間の脚本家は、SNSで猛攻撃にあいながらも自分たちの正当性は曲げようともしない。
さらにシナリオ作家協会の理事である黒沢久子氏が「用があるのは原作で、原作者には会いたくない」などという内容の動画が見つかり、さらなる炎上を見せている。(現在当該動画は削除済み)
#セクシー田中さん 事件で、シナリオ作家協会が出した動画が酷いと話題になっています
— パナマ文書リーク (@Panamabunsyo) February 1, 2024
「最近の原作者はこだわりが強い」
「原作どおりにやって欲しいて人がいる」
「原作者とは会いたくない」
「原作はそのままじゃなくて改変してなんぼ」
「世間が我々の対立構造を作ってる」#芦原妃名子さん pic.twitter.com/N6SxBVsLAZ
日本シナリオ作家協会の削除された密談動画を、3分にまとめてもらいました!
— パナマ文書リーク (@Panamabunsyo) February 3, 2024
主に黒沢久子理事の発言が中心です
AIアーティスト・新宮ラリさん @aisinguularity 映像編集ご協力ありがとうございました!
(Xの時間制限の為、動画前半部分です。3分動画全部見たい方は次ポストへ👇) pic.twitter.com/js1YjLyqnO
関係者である日本テレビも小学館も記者会見をしない上、相沢友子氏の名前は伏せられいかにも芦原妃名子先生がわがままを言ったという虚偽を報道したメディアまである。
「セクシー田中さん」は連載打ち切りという表現をしたテレビ朝日も、メディアの隠蔽体質と傲慢さが垣間見えると大炎上し、連載終了に訂正した。
当該ニュースは米国メディアでも報道されています。
NBC news 「Japanese manga artist Ashihara Hinako found dead days after protesting TV version of her wor
相沢氏はファンから原作クラッシャーであることも隠さず書かれています。
粗悪なバラエティとグルメ番組しか作り出せない最近のテレビ局は、作品を最高の状態で見せるということを知らない。
小池修一郎先生のように「ポーの一族」を許可をとってから何十年も温められるでしょうか?テレビ局も時間をかけて命をかけてコンテンツを作る風潮が失われている。中国ドラマの「琅琊傍」は低予算だが主演の胡歌は2006年の交通事故で顔がぐちゃぐちゃになるほどの大怪我から芸能界に戻ってきたことが、梅長蘇のキャラクターと見事に一致。深い感動を与えました。
お金さえ儲けらるならどんな方法でもいい、スポンサーや芸能事務所に媚びへつらっていれば良いという短絡さでは人の心は動かない。
原作を壊さずに潤色しまとめ上げることはものすごく難しいですよ。ぶち壊すのは人の褌で相撲を取ればいいのだから。
今回分かったのは、活躍し認められている商業ベースの脚本家先生は黙って大黒柱に徹しておられること。原作ありきの脚本を書くことは、オリジナルを脚本を作ることとは全く別のすごい才能だと思います。
テレビ局も本来ならば制作の現場にいてはいけない人たちが居座ったことが、今回の悲劇に繋がったようにしか思えません。
一度起用しても次回はこの人を起用しなければいいだけです。プロデューサーも責任を取って左遷すればいいだけなのです。
最後に、時間のある時は1日に20巻から30巻を没頭して読むほど漫画が好きな私です。
日本のマンガは世界的に誇れる宝であり、だいたい知人の外国人は日本に興味を持ったきっかけはマンガやアニメ、ゲームです。
世界的に認められているコンテンツが漫画であり、メディアミックスで最近はドラマ化・映画化・グッズ化などさまざまな展開がありますが、原作者こそもっと敬意を持って接してもらいたいと思います。
最後に大変なスケジュールの中作品への愛情でテレビドラマ「セクシー田中さん」の9・10話を自ら執筆され、連載途中の漫画の断筆をせざるを得なくなった芦原妃名子先生のご冥福をお祈り申し上げます。