
新型コロナウイルスの感染防止で多くのイベントやコンサートが中止になる中、パリ・オペラ座バレエ団の来日公演は開催されることになりました。
パリ・オペラ座バレエ団は国立の団体。恐らくフランス政府との調整もあった中の決行。
ダンサーやスタッフの皆さんも、よく日本に来てくれたなあ…と思います。日本に行くのが嫌だというダンサーもいるだろうなあと危惧していたので、ある意味中止かなあと思ってはいました。
一方「感染予防のため集まるな」は当然かつ正論であることは前提として、様々な意見もありながらも、来場を望まない人に対する返金対応や入り口でのサーモグラフィーチェック、イベンターとしては決行する上でできる限りの対策は頑張ってくれたのではないかと思います。
また「中止」ではないのでかなり席が埋まっていました。
さてもともとパリ・オペラ座は「ライモンダ」を持ってくる予定だったと思うのですが、ストが長引いたことも関連してか、「ジゼル」に変更となりました。「ライモンダ」死ぬほど楽しみにしてたんですけどねえ・・。
チケットはギリギリで買いましたので、上の方の見にくい席でした(-。-;
キャスト
2月27日(木)19:00
ジゼル:ドロテ・ジルベール
アルブレヒト:マチュー・ガニオ
ミルタ:オニール八菜
Review
久しぶりのドロテ・ジルベール。
全幕で見るのは恐らく10年前の現地で見た「椿姫」のプリュダンス役でとても若々しく可愛らしい感じでしたが、すっかり大人の女性となっていました。
何よりもポワントワークの安定感。このポワントワークこそがパリ・オペラ座の強み。
また今にもセリフが聞こえてきそうなマイム。洗練されたパの一つ一つにいちいち感動しました。
1幕の母がウィリの話を皆にしている時のドロテはすでにウィリが見えてしまっているような、何か遠くを目で追っているような演技に思えました。まるで「死」の迎えが来ているのが少しわかってしまっているかのような感じが悲しい。
これはまるで「エリザベート」のシシィだけがトート閣下が見えるような感じで、とても新鮮でした。
アルブレヒトのマチュー・ガニオは立ってるだけで王子様感はあいも変わらず。
明るく気さくでジゼルがうっかり恋してしまう貴族アルブレヒトにぴったりのふさわしい役作りだったと思います。
ジゼルが死んだ時もこう必要以上に嘆き悲しむこともなく、やや呆然立ち尽くし、「どうすればいいんだ俺」みたいな感じも貴族のおぼっちゃま感があってよかったです。
相変わらず若々しく全然老けないので、そのアンチエイジングの秘訣を教えていただきたいくらいです。
ミルタの八菜オニールさん。素顔がとっても可愛くてまだまだ若いので、「ミルタ」という感じがピンときませんでした。
なにせマリ=アニエス・ジロ、ボリショイのガリーナ・ステパネンコ、エカテリーナ・シプーリナなど錚々たるお姐様方のど迫力のミルタを見てきたからまあこれは私が悪いということで…。
しかし滑るようなパドブレが本当に美しくて、出だしから心を奪われました。できれば違う演目か役で見たかったです。
余談
ところで、パリ・オペラ座ですが、クロード・ベッシー校長時代に比べてポワントワークの力強さがなくなっている気がしてなりません。
パリ・オペラ座のポワントワークとは、「脚で物語を奏でることができる」ことだと個人的には思っていますが、これを体現するダンサーが少なくなっているように思えます。
ギエム、プラテル、ゲラン、ルディエール。この辺りの強くて細かなパを刻んでなお美しいポワントワークに、真似したいけど全くできず、子供の頃の私は大変憧れたものです。
▼ギエムとパトリック・デュポン「海賊」。二人ともベッシー校長の愛弟子。当時は彼らがオペラ座のスタンダードだと思っていましたが、もしかして彼らこそが「異端児」だったのかもしれません。
▼ギエムとルグリの「グラン・パ・クラシック」。擦り切れるほど見たビデオがまだ手元にあります。世界バレエフェスでこのペアで見ているようですが、子供すぎて凄かった以外の記憶がほぼありません>< が、二人のこれを超えるものをこれまで見たことがない。
ルグリにいつか、パリ・オペラ座の総監督をやってもらいたいですね。
Masterpiece